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WILD TIMES
 2005年01月16日 東京・後楽園ホール
第1試合 タッグマッチ30分1本勝負
植松寿絵 Hikaru(全日本女子)
輝優優 前村早紀(全日本女子)
○植松寿絵(15分25秒、リングアウト)前村早紀×
前村に負けて始まり、前村に負けて終わった昨年を悔いた植松は、成人式を迎えたばかりの前村を微妙に羨みつつも、リングアウト勝ちによる完全決着を宣言。
開始早々、リングアウトを狙った植松は、バルコニーまでHikaru組をおびき寄せると、ロープを駆使して一人バルコニーを滑り降り、置き去りに成功。Hikaru組はあわててリングに戻る。しかし、リングに戻ると互いに攻めあぐね、バタバタとした攻防が続く。 それでも最後は植松組が再び場外に持ち込み、カウントギリギリでエプロンに上がった前村の横っ面に植松がミサイルキック。前村をリング下に落とすと同時に、自身はリング上に生還し、公約通り、リングアウト勝ちを果たした。 そして試合後、飛鳥が登場し、「一度も巻いたことのない」という、白いベルトへの挑戦をアピール。王者・Hikaruもこれを了承し、飛鳥興行での対戦が決定した。
第2試合 シングルマッチ30分1本勝負
広田さくら 水村綾菜×
(8分29秒、へなストレッチ)
新人・水村に対抗し、広田はなんと新人時代のピンクのarena水着で登場。
基本に忠実なヘア投げ、「立てーっ」ドロップキック、ブリッジ返しなど、試合運びもデビュー戦当時の戦いぶりを再現。
しかし、慣れない事をしたためか、水村より先にスタミナが切れ、本当に苦しそう。
中盤、新人ムーブが尽きたか、スティンクフェースを繰り出した広田だが、水村にケツを噛まれ、更に素早い丸め込み3連発を食らいアップアップ。犬神家も叩き落され、ケサ固めで絞め上げられると、顔を真っ赤にしてヒューヒュー言いながらロープへ這う。 それでも最後はランニングときメモをぶっちゅりと決めると、懐かしのラ・へなストラル→へなストレッチへの繋ぎでギブアップ勝ち。観客のリアクションの薄さが、時代の流れを感じさせた。
ちなみに広田の使用した入場テーマ曲は、旗揚げ当時を知るファンにとっては涙モノの“チビたちのテーマ”こと、シャンプーの“viva la megababes”。さりげなくカウントダウンを感じさせるあたりは憎い。
「広田、太ったな!」というヤジに対する広田選手の見解はこちら
第3試合 タッグマッチ30分1本勝負 =KAORU復帰戦=
KAORU ライオネス飛鳥
浜田文子 永島千佳世
○KAORU(14分51秒、エクスカリバーから体固め)永島千佳世×
待望の復帰を果たしたKAORUは、文子とあわせるように白のガウンで登場。
飛び技こそ出なかったものの、619を繰り出すなど、ブランクはあまり感じさせず、まずまずのコンディション。
文子も割と違和感なくKAORUと組み、むしろ楽しんで悪いことをやっている様子。
試合は特に中盤からKAORU組が悪事三昧。机片とスチールチェアーを駆使して飛鳥をいたぶる。頼みの永島もルチャムーブこそキレがあったものの、全体的に体が重く、毒霧から飛鳥机の上にパワーボムで叩きつけられ、大ダメージ。
救出に入った飛鳥はボムを狙ってKAORUを抱え上げるが、KAORUは上からの毒霧で脱出し、机でバコン!更に文子が永島の脳天を机で打ち抜き、最後はKAORUがエクスカリバーで復帰即勝利を飾った。
ラフファイトを貫いたKAORUは、飛鳥に対し「あんたの引退には興味はないが、何か忘れてないか?シングル、受けるかどうかはあんたが決めろ」とマイク。飛鳥が対戦を受諾すると「正々堂々、何でもありで勝負だからな」と、“ウチらルール”による決着戦を宣言した。ちなみに両者の最後のシングルは、2001年7月の後楽園。壮絶なハードコア戦は27分29秒両者KOで未完のまま、幕を閉じている。

試合後、KAORUは4月以降の動向について、ファンに報告。
「自分の夢を実現するため、今後はアメリカと原点であるメキシコを主戦場にして行きます。そのためにも飛鳥とのシングルに決着をつけます」と語った。
KAORUの夢とは、おそらく“あの団体”への挑戦と考えていいだろう。バックステージのコメントも含めて推察すると、ボルト除去手術後に海を渡り、メヒコとアメリカで少し日本の匂いを落としてから夢に向かって挑戦、というのが大まかな絵で、“何がしかの答え”が出るまでは、よほどのことがない限り、国内でのKAORUの試合は見られない可能性が高い。そして、2度と日本のマットに上がらないことが、そのままKAORUの夢の実現を意味することになる。
セミファイナル タッグマッチ45分1本勝負
アジャ・コング シュガー佐藤
アメージング・コング 元気美佐恵
○アジャ・コング(14分56秒、ダイビングエルボードロップから片エビ固め)シュガー佐藤×
ダブルコングは現在、WWWAのタッグ王者で、シュガーと元気は言わずと知れた“元テレタッグ”。
ヘビー級4人が揃う中、まずは実質上初対決となる元気とアジャが強烈な逆水平合戦。共にパワー合戦には一歩も引かず。
パワーに加え、コンディションのいいアメコンは、奇声を上げながら大暴れ。シュガー、元気、そして味方のアジャまで3人まとめてふっとばす(アジャは「まいったな、このバカ力…」といった表情)。体格で一枚落ちるシュガーは、中盤まではやや気おされ気味だったが、終盤はアジャに裏投げを決め、更にコーナーからの雷電で圧殺して、劣勢をリカバー。
しかし最後は、アジャがシュガーを裏拳からダイビングエルボーで圧殺して勝利。
メインイベント タッグマッチ60分1本勝負
長与千種 吉田万里子
カルロス天野 AKINO
○カルロス天野(22分01秒、回転エビ固め)AKINO×
98年から99年にかけて、GAEAマットには“浪漫”というムーブメントが存在した。
“基本を大事にするプロレス”“大技を抑えたプロレス”“ムダな受身を排除したプロレス”
あえて定義づけるならこんな感じだったように思う。
しかし、長与千種の頭の中に漠然とあったものを、リングで形作っていく作業は困難を極め、若い選手がそのコンセプトを消化する前に、飛鳥登場→SSU結成の流れと共に“浪漫”はGAEAマットから消えた。
そしてこの日のメインカード、長与&天野vs吉田&AKINO。
おそらく、技術体系こそ違えど、吉田万里子のプロレスは、長与が考えるところの“浪漫”の完成形に近いのだろう。
この日のカードは、長与のリクエストによって、実現した。

長与はこの日、久々に黒いガウンをまとい、旧テーマ“Hearts On Fire”で入場。水着は“浪漫”推進時代の水色と黄色のコスチュームだった。
試合は長与と吉田でスタート。途中、AKINOのチャカしが入ったものの、約10分の間、4人によるグラウンド主体の攻防が続いた。
基本的に長与のグラウンドテクニックは、80年代に第一次UWFへの出稽古で学んだものがベースになっている。それは、クルクルと体勢を入れ替えながら優位なポジションを取る天野、そしてM's勢の持つ技術と比較すると、やはり時代を感じさせる。
案の定、時間経過とともに、M's勢のサブミッションの前に長与がロープを掴むシーンが増えるが、それでも長与はガンコ親父のように、切り返されても切り返されても、クルックヘッドシザース、テレホンアームロックといった昔堅気の関節技で対抗した。気がつくと、つられるように、吉田もチキンウイングフェースロックで長与を絞め上げていた。

何とか脱出した長与は、吉田を抱え上げ、ニークラッシャーを一発。決して華麗ではないが、オヤジの意地でガツンと決め、それを天野がヒザ十字で追撃する。
そして天野が、代わったAKINOにヒールホールドを決めたところから試合は大きく動き出し、長与の二段蹴りを受けてのローリングエルボーはAKINOがキックアウト。AKINOのバックドロップ、ウラカン、トルネードAは天野が返し、最後は天野とAKINOによるめまぐるしい切り返し合いの末、天野が押さえ込んで勝利した。
この試合でマットがバンプの衝撃を吸ったのは、長与のパワーボムと吉田のペディグリー、AKINOのバックドロップの3つくらい。フィニッシュも、ボムやスープレックスではなく、説得力のある丸め込みだった。
決して完成形ではないけれど、これがやり残した事に対する、長与なりのケジメの一つなのだろう。

試合後、吉田はクシャクシャの表情で長与の手を握り、深々と頭を下げた。
1994年、日本武道館。首の故障のため、長期欠場していた吉田の復帰戦の相手を務めたのが長与だった。
最後の最後でクロスした、2人だけの小さな歴史。
顔を近づけ何事か語り合う長与と吉田に、AKINOが無邪気に割って入ると、リングは一気に現実へと戻った。