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WAR CRY
 2004年02月17日 東京・後楽園ホール 観客動員数:1900人
第1試合 シングルマッチ30分1本勝負
×林ひとみ 尾崎魔弓
(13分30秒、裏拳→体固め)
※乱入したKAORUの松葉杖攻撃から
 当たり前の話ながら、道場でベーシックなプロレスの練習を積んでいる新人・林にとって、尾崎のラフファイトは、まったくの技術対象外。未体験の攻撃にペース配分どころではない林は、ゴングから数分でスタミナ切れを起こす。それでも、レフェリーの制止を無視して、コーナーに詰めた尾崎に対し、ショルダーチャージを20連発くらい叩き込むなど、ガムシャラさを見せるが、尾崎の余裕を奪うまでには至らず、終盤は裏拳連打でグロッギー状態に。
 そして終盤、完全に遊んでいる尾崎が、ダウンする林を尻目にレフェリーをコーナーにひきつけると、青コーナーから怪しすぎる人影が……。両手に松葉杖、全身に包帯を巻いたその重症患者らしき人は、フラフラとした足取りでリングに入り、立ち上がった林の背後から、松葉杖をガツン!リング下へエスケープすると、入れ替わるようにすぐさま尾崎が林に裏拳を叩き込んでカウント3。試合が終わると、尾崎の知り合いとおぼしきその人は、無言のまま重い足取りでバックステージへ…。
 なお、尾崎曰く、その人は「頭蓋骨、首、肘、腰、膝、足首、それから胸」を負傷しているらしく、特に胸は生まれついての重症であることが、本部席からでもハッキリと見て取れた。

第2試合 6人タッグマッチ30分1本勝負
カルロス天野 デビル雅美
広田さくら ダイナマイト・関西
長与千種 山田敏代
○広田さくら(16分32秒、エビ固め)ダイナマイト・関西×
 赤コーナーのコンセプトは、“ときめきボラギノール"と“チーム・エキセントリック"のコラボレーション。まったく試合が始まらないまま5分が経過するなど、完全に“ときメトリック"のペースで進んだ試合は、正面からのボラギノールという、放送コードオーバーの一撃を食らった関西が、広田との丸め込み合戦に敗北。
 しかしながら、非日常のエキセントリックワールドにおいて、広田の大物食いは実は日常の風景。非日常の中に、更なる非日常を求めるのは、贅沢すぎというものか?それにしても、今日の広田はちょっとクドかった…。
 
第3試合 納見佳容ファイナルカウントダウンスペシャル30分1本勝負
豊田真奈美 納見佳容×
(全日本女子)
19分21秒、J・O・クインビーボム→体固め
 キャメルクラッチからの鼻引っぱりなど、コミカルな展開で徐々に会場を暖め、場外ダイブを機に大技が飛び交いだす展開は、まごうことなき“豊田ベーシック"。染み付いた全女のリズムに「誰がギブアップするかバカヤロー」「こしゃくなマネをしやがって」など、名セリフの数々が自然に飛び出す。セコンドの高橋、Hikaruも“声"で空間演出。広田のアドリブ参加は、生粋の全女ファンには、トゥーマッチだったか。
 最後はダブルリスト、フィッシャーマン、のんのんハンターと、納見の得意技をクリアした豊田が、クインビー2発を投下して決着。最後の最後、お互いに“お別れのタイミング"を計りかねて、なかなかリングから降りられないでいたシーンは、隠れた名場面だった。
ところで、納見が試合中、豊田のことを「とーよーたーまーなーみー」とフルネームで呼んでいたのはなぜ?
いつも、誰にでもフルネームなの?

第4試合 シングルマッチ30分1本勝負 ※シングル初対決
×シュガー佐藤 ライオネス飛鳥
13分59秒、LSDIII→片エビ固め
 意外にもシングル初対決の両雄。気合入りまくりのシュガーは、すくい投げの連発や、横綱土俵入りポーズ(雲竜?不知火?)から四股を踏んで、倒れた飛鳥を踏み潰そうとするなど、序盤から相撲殺法を全開。特に2度繰り出した新兵器・ストレート掌底のような右の突っ張りは、一閃で飛鳥の動きを止める破壊力。一方の飛鳥はやや押されながらも逆回し蹴りを効果的に多用。シュガーのラッシュを要所で寸断する。
 中盤、飛鳥机が登場してからは、机を巡る攻防となり、久々にセカンドロープに机を渡し、究極ライガーボムを狙った飛鳥だが、シュガーは踏ん張ってこらえると、逆に雪崩式の喉輪落とし(あるいは雪崩式大外刈り?)で同体落下。
 シュガーの裏投げ、飛鳥のライガーボムが飛び交い両者フラフラの中、飛鳥は逆回し蹴りの連打で勝負。これをシュガーはことごとく2で返し続け、逆にバチーンと強烈な張り手をかますが、飛鳥は、この一発を受けても、鬼神の表情のまま仁王立ち。最後は気力でLSD3を叩き込んで薄氷の勝利。試合後、激戦を制した飛鳥は、シュガーに一礼。シュガーは勝ち星には恵まれないものの、コンディションはほぼ100%に近いのでは。

セミファイナル AAAWタッグ選手権試合60分1本勝負
永島千佳世 植松寿絵
里村明衣子
(王者組)
輝優優
(挑戦者組)
×永島千佳世(17分40秒、リングアウト)植松寿絵○
※王者組2度目の防衛に失敗/植松&輝組第11代王者
 “一点集中攻撃"というチームカラーを確立させ、経緯はともあれ、千載一隅のチャンスを掴んだ植松&輝。ところが、タイトル奪取の秘策は、一点集中ではなく、場外カウントアウト狙いだった。
 中盤、嬉々とした表情で2人一緒に「場外!」と叫ぶと、永島組を投げ落とし、南後方通路、更にはバルコニーへと連れ出し、戦場は場外へ。ところが、植松は連れ出したはいいものの、反撃にあってバルコニーに取り残され、自業自得のピンチに。カウントが進む中、植松はなんとバルコニー横に吊られたカーテンをスルスルと滑り降り(!)、なんとかリングに生還。
 リング上の個々の攻防でアドバンテージをとっていたのは、明らかに永島組。特に里村は各種蹴り技や、グラウンド技で植松組を圧倒するが、植松組は抜群のチームワークでこれに対抗し、決め手を許さず。終盤、形勢不利とみた植松組は、輝が指金具を植松に投げ渡すが、これが痛恨の暴投となり、金具はカラーンとリング下へ。チャンスと見た里村組は、里村のオーバーヘッドから永島のフィッシャーマン、そして回転フットスタンプで一気に勝負をかけるが、輝が永島をコーナーから叩き落し、戦場はまたも場外へ。
 カウントが進む中、4者がエプロンでもつれあうと、館内には“両リン"の空気が流れたが、ギリギリでもつれあいを抜け出した植松が、里村を踏み台にカウント19でリングイン。20が告げられ、ゴングか鳴ると、AAAW史上初のリングアウト決着に、館内はブーイングに包まれた。(ちなみにAAAWタイトルはNWAやWWEのような王者有利のルールではなく、あらゆる勝利でタイトルが移動する)
 ブーイングに開き直ったか、新王者組は里村組と観客をおちょくり、「一回、これがいいたかったんだ。誰の挑戦でも受けるぞ!」と調子に乗って絶叫。ところが、次の瞬間、たまたま試合を見ていたデビルが名乗りをあげ、デビルコールに後押しされたデビルがリングに上がると、植松組は「うそだろ…」と、歓喜から一点、絶望の表情に。うなだれる新王者を尻目に、デビルは「えらくなったなぁ、宮口。植松、お前、私のこと“ねえさん"って呼んでたよなぁ」と、格を前面に押し出したマイク。更にパートナーに関西を指名したから、植松組は輪をかけて愕然。
 「誰の挑戦でも受けるとは言ったが、タイトル戦をやるかどうかはチャンピオンが決めるんだぞ!そうですよね、木村さん?」と、植松は苦しい言い逃れを試みるが、木村社長は「違うよ。タイトル戦はチャンピオンじゃなくて、団体が決めるんです。そのタイトル戦、やりましょう!」と、正式決定をアナウンス。大“ぺぺコール"に包まれた場内のリアクションを考慮し、木村社長は決定済みの川越のカードを変更。ここにGAEA史上初・川越ぺぺでのタイトル戦が電撃決定した。
 地団駄を踏む新王者組は「お前らもリングアウトでぶっ殺してやる!」と意味不明の捨て台詞を残し、逃げるように退場。しかも、肝心のベルトを忘れたまま帰ってしまい、デビルに「ベルト忘れてますよ〜」と突っ込まれる始末。ベルトはタイトル戦前にも関わらず、挑戦者・デビル&関西組の腰に…。
 新王者は“一度もベルトを巻けないまま王座陥落"という、前代未聞のピンチに陥った!!

メインイベント AAAWシングル選手権試合60分1本勝負
浜田文子
(王 者)
アジャ・コング×
(挑戦者)
17分40秒、スピンキック→片エビ固め
※王者、初防衛に成功
 入場時からギラついた目のアジャは、序盤、強烈なラフファイトを展開。開始数分で2日前に縫ったという文子の傷口が開き、王者は劣勢を強いられる。
 但し、中盤以降の攻防の主軸を成したのは、タイトル戦らしい力と技の攻防。流血のハンデを追いながら、アジャと互角の攻防を繰り広げるチャンピオン、特にアジャのバックドロップを受けた直後に、その巨体をヘソ投げバックドロップで投げ返したシーンは圧巻。アジャも手数を抑え、一発一発の説得力で勝負する重厚なスタイルで、タイトル戦に厚みを加える。
 両者持ち技とスタミナが尽きていく中、裏拳をしのいだ文子は雄叫びを上げて変形APクロスの体勢へ入るが、疲労のため、2度担ぎ上げることに失敗。それでも、アジャに反撃の隙を与えず、すぐさまスピンキックにスイッチ。3発目が側頭部にヒットすると、巨体はグラリと崩れ、その肩はゴングが鳴っても上がることはなかった。
 試合後、這いつくばりながら顔を近づける両雄。その無言の間に、感傷的な空気が流れるが、文子はその空気を断ち切るかのように表情を引き締めると、アジャの肩を両手の“踏み台"にして立ち上がり、両手を挙げて勝利のアピールした。
 ロング興行を文句のない勝利で締めた文子に漂う王者の風格。しかし、今日に関しては、それと同等、あるいは以上に挑戦者の姿勢が素晴らしかったと、個人的には思う。