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LIMIT BREAK
2001年4月29日 川崎市体育館
観客動員数:4000人
第0試合 シングルマッチ15分1本勝負

○長与 千種
vs
前田 美幸×
(2分40秒、ニールキックから体固め)
中島リングアナ・試合のポイント
でっかいねー、前田。でも、試合は普通の新人。そりゃ普通の新人だったら、長与千種にニールキック放つのに、躊躇しますよ。もしも。もしも彼女がこの先もプロレスを続けるとして。次にどの団体のリングに上がるのかは、わかりません。ただ、もう一度リングに上がるキッカケぐらいにはなったかなと。これで清算……とは言いませんけど、会場のハートフルな拍手を無駄にしちゃいけないと思いますよ、やっぱり。
第1試合 タッグマッチ30分1本勝負

植松 寿絵

竹内 彩夏
vs
広田 悪良○

ポリス×
(10分27秒、スクールボーイ)
中島リングアナ・試合のポイント
ここ最近、とかく険悪なP&A。スクリーンでは広田の身勝手さについにポリスがブチ切れ、仲間割れ寸前に。ところが、広田が久々にHHHベルトを持ち出し(関西が店の厨房に隠してたのを見つけたらしい)、ポリスにプレゼント。これでいとも簡単に仲直りしたP&Aは、更に広田が自分用に旧HHHベルト(棚沢さんベルト)まで持ち出し、勝手にこの試合を史上初のHHHタッグ選手権試合に決定!!
そして試合は……
(1)植松が可愛そうだったが、竹内は結構楽しそうだった。
(2)ポリスのラリアットからのウィーはインチキ外人のアピールみたい。
(3)広田はポリスと組むとなぜか鼻血を出す(興奮するの?)
(4)自分を生かしてもいいが、相手を殺してはいけないと思う。しかも3人も。
そして事実関係。
(1)広田がポリスをフォール(ノールール戦)。
(2)HHH王座は広田が2冠統一第37代王者(第36代は広田&ポリス組)
(3)広田の黒スパッツはGAEA-改のものと判明(胸にGってついてた。山田の?)
(4)P&Aは離婚
(5)広田はチームクラッシュの控室には入れてもらえなかった(バックステージの廊下をウロウロしてた)
第2試合 タッグマッチ30分1本勝負

○アジャ・コング

KAORU
vs
ダイナマイト・関西×

山田 敏代
(14分16秒、裏拳から片エビ固め)
中島リングアナ・試合のポイント
序盤からKAORUの机攻撃を関西組がクレーム。しかし、KAORUはお構いなしにバコンバコン。大会場限定のトラス・ムーンサルト以外はほとんど机攻撃一本槍。最初はたしなめていたパートナーのアジャも試合が進むにつれてイラつきを隠せず、終盤、ついにKAORUに裏拳! これでKAORUは場外でダウン。試合はアジャが関西をグローブを外しての裏拳で仕留めて終了。試合後、蘇生したKAORUは3人を机でメッタ打ちにし、とっとと退場。アジャは関西・山田と握手。どうやら青コーナー側は卑弥呼プラスKAORU派と、アジャ・関西・山田の2派に分かれそうな気配。
とかくバタバタしがちなシチュエーションでしたが…アジャ-関西のヘビーな攻防がドカッと中心軸にあったこと。状況を把握した山田が一歩引いて単なるハンディ戦にしなかったこと。我が道を貫いたKAORUの支持派もちゃんといること。個人的にはすごく好きな試合です。
第3試合 シングルマッチ30分1本勝負

×ライオネス飛鳥
vs
井上 京子○
(12分12秒、ラリアットから片エビ固め)
中島リングアナ・試合のポイント
デッカイもん同士が派手にハードにぶつかり合う、プロレスのシンプルな醍醐味がギュッと詰まったシングル戦は、2発目の毒霧をかわした京子がラリアットを叩き込んで飛鳥からピン。
今日の飛鳥選手っていうのは、久々にヒール時代の飛鳥選手を全開にしてきたわけですが…でも、それだけでした。"ヒール飛鳥"は彼女が築き上げた偉大な財産。だからこそ、過去の財産ではなく、数年分の進化(含むクラッシュ2000)をも飲み込んだ、新しいヒール飛鳥が見たかったなぁと。それに不足のない素晴らしい相手だったと思うし。そういった意味では、過去の飛鳥-京子のダイジェスト版みたいな試合でした。贅沢過ぎ?
第4試合 シングルマッチ45分1本勝負

○永島 千佳世
vs
デビル 雅美×
(14分12秒、レフェリーストップ)
中島リングアナ・試合のポイント
20年以上のキャリアに裏打ちされたプライドを"土下座"という言葉に込めたデビル。今の自分に何が賭けられるのか、戦いを通じて返答を迫られた永島。かくも重いテーマの答えが提示される試合になるはずだったのですが…。デビルが試合中に左ヒザを負傷。テーピングを施すもヒザが動かず、無念のレフェリーストップ負け。
動かないカラダ、痛み、大舞台、プライド、試合不成立、号泣…。
それでもリングの"上"に上がって、嗚咽しながら詫びを入れたデビル。マイクの前に「そんな体で出来んのか」という非情なフレーズを選択し、ヒザを攻めようとした永島。続行か中止か、極限下の葛藤を繰り返したトミー。
デビルコールを強要したポリス。
人の想いが静寂の中で壮絶に交錯した、ある意味非情に尊い空間でした。
「止めるのが遅い」「不完全燃焼」これは初観戦の人に多かった意見で、一般的に見たらまったく持ってその通り。これは大きな反省点。
でも、決して好き者の空間だけを良しとするわけではないんですが、グッとくる"プロレス"だったなぁ。皆さんは?
セミファイナル シングルマッチ60分1本勝負
 AAAWシングル選手権試合

○尾崎 魔弓
vs
長与 千種×
(6分16秒、変形腕固め)
※尾崎 魔弓初防衛成功
中島リングアナ・試合のポイント
ゴング直後、尾崎が裏拳連打。これを顔色一つ変えずに受け流した長与はスリーパーで一気に絞め落としに! 何とかしのいだ尾崎は戦法をスイッチし、左肩狙い。正面からだけでなく、長与のバックフリップを切り返して肩を極めるなど、業師ぶりも発揮しつつ、ネチネチと集中攻撃。長期戦不利を悟った長与は素晴らしいフォームの2段蹴りを皮切りに、スーパーフリーク、ランニングスリーとボム系連打で猛ラッシュ。しかし、トドメ狙いで尾崎をリフトしたところで、ついに左肩の爆弾が爆発! 長与がうずくまると、尾崎は待ってましたとばかりに馬乗りになって一気に腕を絞り上げ、電撃のギブアップ勝ち!
 チャンピオン、予告通りの100%防衛にニヤリ。文句をたれる長与ファンには「アタシがチャンピオン様・様・様だ!!」と一喝。……最近の王者様、素敵過ぎ!!
一方、敗れた長与はついに左肩の手術を決意。復帰は…リハビリもあるので少し時間がかかりそう。
個人的には長与千種の素晴らしさは、パワーでもスピードでもテクニックでもなく、駆け引きの中で見せる"ケレン味"だと思います。その魅力とか色気は、ここ最近の肩を気にしながらの5分ぐらいの短期決戦ではほとんど出てないです。ケレン味溢れる長与千種の姿を待望する意味でも、ここは一つオーバーホールも兼ねて、じっくり治してほしいと思います。
メインイベント シングルマッチ時間無制限1本勝負

○里村 明衣子
vs
北斗 晶×
(21分30秒、KO)
中島リングアナ・試合のポイント
「私は、私なんだよ」
これは試合後の北斗選手のコメント。
"デンジャラスクイーン"は、北斗晶の上位概念なんかじゃないと。あの時はあの時。卑弥呼のテーマで登場し、花道で木刀を投げ捨てたのが、今の北斗だと。かくいう私も、必要以上に"デンジャラスクイーン"を神格化していた一人。自戒も込めて、もう"あのテーマ"とか"あの格好"に幻想を抱くのはやめましょう。
だって、十分凄かったもん、この日の北斗。後楽園の加藤戦は"あの格好"だったけど、あれは今にして思えば、様式美。この日のほうが、よっぽど生々しい北斗晶だった。
世界一痛そうな張り手。"人の技"デスバレーボム。サソリ合戦を制したSTF。極めながら更にグリグリやるストラングル。タメにタメて15分過ぎから吐き出したミサイルキック、変形バックドロップ、スピンキック、コンヒーロ、ノーザンライトボム。

受けきった里村も凄かった。30発近い張り手を一発もかわさず、全部左頬で受け、出した技はエルボー、オーバーヘッド、ストラングル、デスバレー2発、珍しいノーザンとジャーマン(ブリッジは崩れた)ぐらい。後はひたすらローキックと額狙いのミドル。殺伐かつ熱気に満ちたシングル戦は、最後に両者ダウンから北斗が先に立ち上がろうとするも崩れ落ち、ギリギリで立った里村の10カウント勝ち。
北斗晶と、こういう試合が出来る女子プロレスラーがこの世代にいるっていうのは、まったくもって頼もしいこと。このレビューは北斗主体になりましたが、内容は里村主体の試合だったと思います。

なお、北斗は試合後にしばしのオーバーホールを宣言。「毒グモの網を張り直す」という独特の言い回しでしたが、それだけ心と体を削り取るような試合だったということでしょう。